立っているだけでつらい腰の痛み、その原因は「骨のズレ」かもしれません
■ 腰椎すべり症とは?
腰椎すべり症とは、腰の骨(腰椎)が前方にズレてしまう状態のことをいいます。
本来きれいに積み重なっているはずの腰椎が、姿勢や筋肉のバランスの崩れ、加齢の影響などにより前方にずれてしまい、神経や筋肉に負担をかけることで、腰痛や脚のしびれを引き起こす病気です。
症状が軽い場合は違和感程度で済みますが、進行すると立っているのもつらくなり、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。
■ なぜ腰椎がズレるのか?──すべり症の原因
すべり症は、年齢や体の使い方によって起こるものですが、大きく分けると以下の2つのタイプがあります。
【1】変性すべり症(中高年に多い)
- 加齢によって腰椎を支える靭帯や椎間板がゆるみ、骨がずれてしまう
- 腰の4番目の骨(L4)でよく起こる
- 女性に多く、骨盤の形やホルモンの影響も関係
【2】分離すべり症(10代~若年成人に多い)
- 成長期のスポーツや過度な運動で、腰椎の一部(椎弓)が疲労骨折して分離し、その後、骨がズレる
- 腰の5番目の骨(L5)で起こることが多い
このように、加齢や姿勢、筋力の低下、体の使い方のクセなどが積み重なることで、徐々に「すべり」は進行していきます。
■ 腰椎すべり症の主な症状とは?
すべり症の症状は、単なる腰痛にとどまりません。腰の不安定さや神経への圧迫があるため、次のような症状が現れます。
【代表的な症状】
- 長く立っていると腰が重だるく、痛くなってくる
- 歩くと脚がしびれて、休みながらでないと進めない
- 背筋を伸ばすと腰がつらく、前かがみの方が楽
- 太ももやふくらはぎにしびれや冷え感がある
- お尻の奥がズーンと痛む
- 長時間の家事や買い物ができなくなった
これらの症状は、脊柱管狭窄症に似ている部分もあり、両者が同時に起こることも少なくありません。
■ セルフチェック|すべり症の可能性があるあなたへ
以下の項目に3つ以上当てはまる場合は、すべり症の可能性があります。
- 長時間立っていると腰が痛くなる
- 歩いていると脚がしびれて止まりたくなる
- 腰を反らすと症状が強くなる
- 安静にしているときはそこまでつらくない
- 腰を横から見ると反り腰になっている
- 昔、部活や運動で腰をよく痛めていた記憶がある
あくまで簡易チェックですが、心当たりのある方は、早めに専門機関に相談することをおすすめします。
■ すべり症がなかなか良くならない理由は?
「コルセットで痛みをごまかしながら生活している」
「電気治療や湿布でなんとかやり過ごしている」
そういった対症療法だけでは、すべり症は根本的に改善しません。
すべり症が改善しない主な理由は次のとおりです:
- 腰の安定性を保つ筋肉(体幹)が弱い
- 姿勢が悪く、腰の反りが強くなっている
- 骨盤の歪みを放置している
- 「痛いから」といって動かずに筋力が落ちている
- 自己流のストレッチで悪化している
つまり、骨のズレ自体をどうにかしようとするよりも、周囲の筋肉と姿勢を整えて負担を減らすという発想が大切なのです。
■ すべり症でやってはいけないこと
症状を悪化させる行動を避けることも、改善への第一歩です。以下のような行動は要注意です。
- 背筋をピンと伸ばす習慣(反り腰になってしまう)
- 寝起きに勢いよく体を起こす
- 長時間の立ち作業や調理
- 前かがみで重い物を持つ
- 反動をつけて体操をする
- ストレッチで腰をそらす動作(ヨガなども注意)
反らすよりも「丸める」「安定させる」ことが基本です。
■ 自宅でできるセルフケアと体操
すべり症のセルフケアの目的は、「腰を安定させる筋肉(体幹)を整える」「腰を反らさず、神経の圧迫を減らす」ことです。
① 膝抱えストレッチ(仰向け)
- 仰向けで寝て、両膝を胸の前に抱える
- 腰を丸めるようにゆっくり引き寄せて20秒キープ
→3回繰り返す
② 骨盤の前後傾体操(骨盤の動きを整える)
- 仰向けに寝て、膝を立てる
- 息を吐きながら骨盤を後ろに傾け、腰を床に押しつける
- 吸いながら骨盤を元に戻す
→10回ゆっくり繰り返す
③ ドローイン(体幹の筋トレ)
- 仰向けまたは座った状態で背筋を伸ばす
- 息を吸ってお腹をふくらませ、吐きながらへこませる
→10回1セット、1日2セットが目安
■ すべり症の予防法|再発しない身体づくりを
一度症状が落ち着いても、再発しやすいのがすべり症の特徴です。普段の生活で次のようなポイントを意識してみてください。
姿勢の改善:
- 骨盤を立て、腰が反りすぎないようにする
- 立つときも「腹筋に軽く力を入れる」クセをつける
- ソファよりも硬めの椅子を選ぶ
日常動作の工夫:
- 荷物を持つときは腰を曲げず、膝を使う
- 長時間立つときは足台を使って片脚ずつ休ませる
- 起床時は横向き→手で起き上がるようにする
運動習慣:
- ウォーキングなどの軽い有酸素運動を取り入れる
- 週に2~3回のドローインやストレッチを習慣にする
- 無理なく続けられるメニューを選ぶ
■ よくある質問(Q&A)
- すべり症って手術しないと治らない?
A. ほとんどのケースで保存療法(運動・姿勢改善・筋トレ)で改善が可能です。重度で、神経の圧迫による麻痺や排尿障害がある場合に限り、手術が検討されます。 - すべり症と脊柱管狭窄症の違いは?
A. すべり症は骨のズレ、狭窄症は神経の通り道が狭くなることが主な原因ですが、両者が合併するケースも多く、症状が似ています。対策やセルフケアは共通点が多いです。 - 整骨院での施術は効果がある?
A. 姿勢改善、体幹強化、骨盤のバランス調整などを目的とした施術は、すべり症の根本改善と予防に有効です。セルフケアと組み合わせるとより効果的です。
■ 腰椎すべり症 改善のポイントまとめ
- 腰椎が前方にズレて、神経や筋肉に負担がかかる状態
- 加齢・姿勢・筋力低下が原因で発症・進行する
- 反らすより「丸める」「安定させる」がセルフケアの基本
- 日常生活の姿勢や動作を見直すことが再発予防につながる
- 継続できる体操と生活改善が、長期的な改善のカギ