お尻の奥がズキッと痛む…それは「坐骨神経」ではなく「筋肉」が原因かもしれません
■ 梨状筋症候群とは?
「座っているとお尻が痛くなる」
「長く歩くと太ももの裏がしびれる」
「足を上げるとお尻から脚がビリッとする」
このような症状がある方は、梨状筋症候群の可能性があります。
梨状筋症候群とは、お尻の深いところにある梨状筋(りじょうきん)という筋肉が硬くなり、そのすぐ下を通っている坐骨神経を圧迫することで、痛みやしびれが出る状態のことを指します。
「坐骨神経痛」の原因の一つであり、特に腰の骨には異常がないのに、お尻や脚に症状が出る人に多く見られます。
■ 梨状筋とは?どこにあるの?
梨状筋は、お尻の奥にある小さな筋肉で、仙骨(背骨の一番下)から大腿骨(太ももの骨)に向かって斜めに走っている筋肉です。
この筋肉のすぐ下を坐骨神経という大きな神経が通っています。そのため、梨状筋が硬くなってしまうと、神経を物理的に圧迫し、痛みやしびれが引き起こされるのです。
■ なぜ梨状筋が硬くなるのか?――主な原因
以下のような要因が、梨状筋を硬くし、症状を引き起こすと考えられています:
- 長時間の座りっぱなし(デスクワーク・運転など)
- 急激な運動やフォームの乱れ(ランニング・ゴルフなど)
- 筋力のアンバランス(お尻の筋肉が使えていない)
- 骨盤や股関節の歪み
- 腰・背中・太ももの柔軟性の低下
- 姿勢不良(反り腰や骨盤の後傾)
梨状筋は体幹と下半身をつなぐ重要な筋肉の一部です。上半身と下半身の連動がうまくいかないと、代償的に緊張しやすくなります。
■ 主な症状と特徴
梨状筋症候群は、腰ではなく、お尻が主な発症部位です。
以下のような症状が見られることが多いです:
- お尻の奥がズーンと重だるく痛む
- 太ももの裏やふくらはぎにかけてしびれる
- 足に力が入りにくく、歩きにくい
- 長時間座っていると悪化し、立ち上がるとやや軽くなる
- 片側の症状が中心(左右差がある)
- 腰を反らしても痛みが強くならない(※腰椎由来との違い)
特徴的なのは、動き出しより「座っていると悪化する」点と、「腰ではなくお尻が中心」という点です。
■ セルフチェック|梨状筋症候群の可能性は?
次の項目に2つ以上当てはまる方は、梨状筋症候群の疑いがあります:
- お尻を押すと「奥にズーンと響く」感じがある
- 長時間座っていると脚がしびれてくる
- 階段や坂道で、お尻から太ももがつらくなる
- ストレッチをするとしびれが強くなることがある
- 横になっても痛みが取れない
- 痛みが片側だけに集中している
痛みが続く場合や症状が悪化する場合は、専門家に相談することをおすすめします。
■ 梨状筋症候群が改善しにくい理由
腰椎ヘルニアや脊柱管狭窄症と間違われやすく、「画像上は異常がない」と診断され、放置されやすいのがこの症候群の特徴です。
また、以下のようなケースでは、なかなか良くなりません:
- 梨状筋だけをストレッチしているが、周囲の筋肉(中殿筋や腰方形筋など)に硬さがある
- 股関節の動きが悪く、骨盤がうまく連動していない
- 姿勢が改善されず、同じ負担がかかり続けている
- 深層筋がうまく使えておらず、表層筋でかばっている
- 自己流ストレッチで無理をしてしまっている
お尻だけでなく、腰・骨盤・股関節・足首まで含めて「全体のバランスを整える」ことが大切です。
■ やってはいけないこと
症状があるときにやりがちなNG行動をご紹介します:
- お尻の痛い部分を強く押す・叩く
- 無理に伸ばそうとして深くストレッチする
- 長時間の正座やあぐら
- ソファなどで背中が丸くなる座り方
- 片側に体重をかけた立ち方・座り方
「筋肉をやさしくゆるめる」「神経を刺激しない」ことが、改善の第一歩です。
■ 梨状筋症候群に効果的なセルフケア
症状のある方でも無理なく行える、梨状筋まわりをゆるめるストレッチ・体操をご紹介します。
① 仰向けクロスストレッチ(梨状筋の基本)
- 仰向けに寝て、片足の足首を反対の膝の上に乗せる(足を組む形)
- そのまま両手で反対の太ももを抱え、胸の方向に引き寄せる
- お尻の奥が伸びるのを感じながら20秒キープ
→左右2〜3回ずつ
② テニスボールほぐし
- 仰向けまたは床に座って、テニスボールをお尻の下に置く
- 体重をかけて、痛気持ちいいポイントを探す
- 30秒〜1分、呼吸を止めずにゆっくり
※痛みが鋭い場合は中止してください。
③ ドローイン(体幹の安定)
- 仰向けまたは椅子に座り、両手をお腹に添える
- 鼻から吸ってお腹をふくらませ、口から吐きながらへこませる
→10回 × 2セット
骨盤や股関節を支える力が弱いと再発しやすいため、体幹の安定も大切です。
■ 日常でできる予防と工夫
梨状筋症候群は、「座り姿勢」「足の使い方」のクセを見直すことで再発を防げます。
姿勢のポイント:
- 背筋を伸ばして座り、骨盤を立てる
- 長時間座るときはクッションや腰当てを活用する
- 30分に1回は立ち上がり、軽くストレッチする
- 両足をそろえて座り、足を組まない
動作の工夫:
- 急な運動の前には必ずウォームアップ
- 階段の上り下りは手すりを使う
- 荷物は左右バランスよく持つ
- クッション性のある靴を選ぶ
■ よくある質問(Q&A)
- 梨状筋症候群と坐骨神経痛の違いは?
A. 梨状筋症候群は「お尻の筋肉が坐骨神経を圧迫すること」が原因の坐骨神経痛の一種です。つまり、坐骨神経痛の中に含まれるタイプのひとつです。 - 病院では異常なしと言われたけれど、痛みがあるのはなぜ?
A. レントゲンやMRIで異常が見つからない場合でも、筋肉や軟部組織の問題で痛みが出ることがあります。梨状筋症候群もその一つです。 - 整骨院で対応できますか?
A. はい。筋肉のバランス調整や姿勢改善、セルフケア指導など、根本からのケアが可能です。
■ 梨状筋症候群 改善のポイントまとめ
- 梨状筋が硬くなることで、坐骨神経を圧迫し、痛みやしびれが出る
- お尻が中心の痛み、座って悪化するのが特徴
- 単なるストレッチだけでなく、股関節や体幹の安定も必要
- 長時間座る習慣を見直し、姿勢と動作を整えることが予防の鍵
- 「全身のバランスを見る視点」が改善への第一歩